ワンルームマンション投資-表面利回りと実質利回りの違い
不動産鑑定士のケイです。
先日発売の週間ダイヤモンドに「不動産投資の甘い罠」という特集記事がありました。
常々、鑑定の仕事をしていて感じることがそのまま書かれており、興味深く読めました。
週刊 ダイヤモンド 2017年 6/24号 [雑誌] (相続・副業の欲望につけこむ不動産投資の甘い罠)
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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- メディア: 雑誌
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実家の遊休地に建設する相続税対策のアパートについては、以前から国会でも問題として取り上げられており、皆さんもご存知と思います。
サラリーマンをしながら、副業として不動産投資を考えておられる方もいらっしゃると思います。
今回の記事はこれからワンルームマンション投資を考えている方にとって、ワンルームマンション投資が損か得かを判断する物差しとして、「利回り」と「借入金利」の関係について少し書きたいと思います。
表面利回りと実質利回りの違い
そもそも、利回りとは投資元本に対する毎年のリターンの割合を意味します。
これは、鑑定評価の中で「元本(投下資本)と果実(収入)の関係」と表現されます。
すなわり、例えば利回り10%とは1000万円投資すると、毎年の収入が100万円という意味です。
後で詳しく説明しますが、ひとくちに利回りと言っても、通常「表面利回り」と「実質利回り」があります。不動産鑑定評価では原則「実質利回り」を使います。
【例1】実質利回り10%
年間100万円の利益×10年=1000万円となり10年後に投下資本の回収が終わり、11年目以降、マンションから生み出される利益は100%の儲けとなります。
【例2】表面利回り10%
毎年100万円の総売り上げ×10年=1000万円ですが、ここでは固定資産税や入退去にかかる壁紙等のリフォーム費用、空室損は一切含まれていないため、10年後も未だ元本の回収さえも終わっていない状況になります。
しかし、ワンルームマンション投資等で営業マンがお客さんに説明する場合の利回りは、基本的には「表面利回り」をいうケースが多いです。
両者は必ず、表面利回りは実質利回りよりも大きいという関係が成り立ちます。
※「表面利回り>実質利回り」
1.「表面利回り」とは
年間総収益(満室想定家賃)を物件購入価格で除したものとなります。
例)1.物件購入価格
1600万円
2.年間総収益(満室想定家賃)
月額家賃(共益費込)7万円×12ヶ月=84万円
3.表面利回り(年間総収益÷物件購入価格)
84万円÷1600万円=表面利回り5.25%
2.「実質利回り」とは
年間純収益(総収益ー総費用)を物件購入価格で除したものとなります。
例)
1.物件購入価格
1600万円
2.年間純収益
(1)総収益
①家賃(共益費込)
月額家賃7万円×12ヶ月=84万円
②空室等損失相当額
月額家賃7万円の1ヶ月程度=7万円
※賃借人の入れ替え期間や空室期間
③総収益
①ー②=77万円
(2)総費用
①維持管理費(管理費)
0.5万円×12ヶ月=6万円
②修繕費(修繕積立金)
0.3万円×12ヶ月=3.6万円
③プロマティマネジメント費用(集金代行、入退去管理費用等)
※家賃収入の2〜3%
84万円×3%≒2.5万円
④テナント募集費用(賃貸仲介会社への仲介手数料)
※平均2年に1回の入退去。家賃の1ヶ月分。
7万円÷2年=3.5万円
⑤公租公課(固定資産税・都市計画税)
※ワンルームの場合(おおよそ)
5万円
⑥損害保険料(火災保険)
1.5万円(おおよそ)
⑦総費用
①〜⑥の合計=22.1万円
(3)純収益
(1)の③総収益ー(2)の⑦総費用=54.9万円
3.実質利回り(2.年間純収益÷1.物件購入価格)
54.9万円÷1600万円≒実質利回り3.43%
上記の例で、同一の物件でも表面利回りは5.25%、実質利回りは3.43%になりました。この数字はワンルームマンションではよくある数値だと思います。
実際に必要な費用が一切考慮されていないのが表面利回りです。
銀行からの借入金利と実質利回りの差が本当の儲け
現金で投資用マンションを購入するのであれば、理論的には利回り3.43%で運用が可能となります。
しかし、一般のサラーリーマンが不動産投資を始める場合、不動産投資用のローンを組むことが多いと思います。
この場合、一般に現在の借入金利は2.45〜4.5%程度が多いと思われます。
そうすると、1600万円の投資に対して、年間のリターンが3.43%となるのに対して、資金調達費用(利息)が年間約3%必要となると、最終的な手残りは、
3.43%ー3%=0.43%
になります。
1600万円の借金をして、1000万円の1年定期預金金利(0.2%)とほぼ変わらなくなってまいます。
ノルマが厳しい営業マンが表面利回りと実質利回りの違いを説明せずに、儲け話として勧誘するケースも中には見受けられます。
たまに、ぼくの携帯電話にも関西地方の不動産業者からワンルームマンション投資の勧誘電話がかかってきます。その営業マンに利回りについて説明してもらい、借入金利を考慮した後には、マイナスになっていることもあります。
まとめ
不動産投資においては、表面利回りと実質利回りと借入金利の差を念頭に置くことが重要だと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
今回の記事はいかがでしたか。
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