日本の不動産バブル崩壊2017~2020オリンピックか?
不動産鑑定士のケイです。
最近の不動産価格の高騰は少し危うさを伴っていると思います。
日本における不動産バブルの崩壊は、早い予測では2017年後半。もしくは、2018年という可能性もあります。また有力説としては2020年東京オリンピックが挙げられます。
マンションにしても、ビルにしても、売却益を得られると思って取引をすることこそ、バブルです。
もしかして、今、マンションを買おうか考えているあなたも、周囲の同僚や友人で、自宅マンションが購入時をより高い値段で売れたという話を聞いて、今マンションを購入し、しばらく住んでから、購入時と変わらない価格か、それよりも高値で売却しようと考えていませんか?
そう思って、不動産を購入しようとしている人はあなただけではありません。
皆がそう思っていることこそが、まさにバブルの現象です。
あなたが不動産を購入しようとしていることが、正しい選択かどうか、まず不動産の価格について知ることが大切です。
不動産の価格に関する専門家として、不動産鑑定士であるケイがご説明いたします。
不動産の価値は3つの側面で考える
不動産の価値は基本的には市場性、費用性、収益性の3つの側面から考えることができます。そして、不動産をこの3つの側面から正しく捉えることによって、不動産の価値を適切に把握するこができるのです。
一般に土地価格や建築費が高騰した場合、市場性や費用性から見て不動産価格は上昇しますが、家賃は土地や建物価格よりも上昇スピードが緩やかなため、収益性が落ちてくる結果になります。
したがって、市場性、費用性からみた価値のみが上昇し、収益性価値と乖離する場合には、バブルの兆候を認識する手掛かりとなります。
1.市場性
市場性とは、市場における現実の取引価格に着目した価値です。どこでどんな不動産がいくらで取引されたかを比較することで不動産の価格を導き出すことができます。
2.費用性
費用性とは、土地を購入し、建物を建てるために要した費用に着目した価値です。例えば、数年前と比較するとマンション1戸当たりの建築費は約1.2~1.4倍に跳ね上がっています。あとで紹介しますが、土地価格もここ最近で場所によっては毎年10数パーセントづつ上昇しており、土地取得費用も高騰しています。
3.収益性
収益性とは、その不動産を第三者に貸した場合の家賃収入に着目した価値です。具体的には、年間賃総額から年間費用総額(固定資産税や修繕費・管理費等)を引いた手残り純収益が物件取得価格の何パーセントに当たるかを計算します。
土地神話が復活した?
答えはNOです。
国土交通省が毎年3月に発表している地価公示によると、例えば銀座三丁目の公示地価はピーク時の平成3年と比較すると、土地価格はまだ半値以下ではありますが、平成3年当時の価格が行きすぎであり、今後平成3年当時の水準まで上昇することはおそらくないだろうと思います。
その理由は、当時は土地神話により、市場性が最も重視されており、売却益をあてにした取引が横行していたため、先に説明した収益性を度外視した取引により価格が高騰してしまっていたのです。
しかし、現在はJリートの仕組みや金融機関の融資審査の関係上、収益性が一定程度見込めない不動産投資は行われなくなっています。
中央区銀座三丁目2-9 | ||
地価の推移 | ||
発表年 | 円/平米 |
変動率% |
H28 | 10,500,000 | 20 |
H27 | 8,750,000 | 12.2 |
H26 | 7,800,000 | 9.9 |
H25 | 7,100,000 | 0.9 |
H24 | 7,040,000 | ▲2.5 |
H23 | 7,220,000 | ▲4.4 |
H22 | 7,550,000 | ▲17.9 |
H21 | 9,200,000 | ▲20.0 |
H20 | 11,500,000 | 17.9 |
H19 | 9,750,000 | 34.5 |
H18 | 7,250,000 | 25 |
H17 | 5,800,000 | 10.3 |
H16 | 5,260,000 | 2.5 |
H15 | 5,130,000 | 0.6 |
H14 | 5,100,000 | 1 |
H13 | 5,050,000 | 2 |
H12 | 4,950,000 | ▲3.7 |
H11 | 5,140,000 | ▲3.0 |
H10 | 5,300,000 | 0.0 |
H9 | 5,300,000 | 0.0 |
H8 | 5,300,000 | ▲22.3 |
H7 | 6,820,000 | ▲30.4 |
H6 | 9,800,000 | ▲32.4 |
H5 | 14,500,000 | ▲27.5 |
H4 | 20,000,000 | ▲11.9 |
H3 | 22,700,000 | 0.0 |
H2 | 22,700,000 | 3.2 |
H1 | 22,000,000 | 1.9 |
S63 | 21,600,000 | 2.9 |
S62 | 21,000,000 | 44.8 |
S61 | 14,500,000 | 45 |
S60 | 10,000,000 | 0 |
関連リンク:東京都不動産鑑定士協会東京都の地価Googleマップ版
Jリートの不動産購入もすでに限界か!?
現在、日本全国で大規模な不動産の取引を行っているメインプレーヤーはJリートです。
彼らJリートが新規に不動産を購入時・売却時および期末の決算時、大手不動産鑑定業者が不動産の収益性に着目した鑑定評価書を発行しています。
鑑定評価書の要約は各リートのHPで公開されており、最近の東京都心部におけるオフィスやレジデンスの還元利回りは一部で3%台となっています。
そもそもリートは当期利益のほとんどを分配金として配当することから、利回りが前述のとおり3%台となってもリートの仕組み上は問題がありません。
(ただし、ある程度の利率で分配金を配当するためにはギリギリの水準に近づいていると思われます)
この意味で、それまでプレーヤーであったリートが売買を手控える傾向にあるのではないかと予測します。
したがって、オフィスやレジデンスなど賃貸用物件の不動産価格はほぼ上限に近いと考えられると思います。
分譲マンションの買い手の減少
先に述べたJリートでは、売買当事者は収益性に着目していました。
それでは、分譲マンションの場合はどうでしょうか?
あなたが自分で住む目的で、分譲マンションを購入するとき、他人に貸す家賃を計算しますか?
通常はその計算はしないと思います。そうすると、分譲マンションでは収益性がおろそかにされがちということがわかります。
なお、費用性は通常、マンションを分譲するデベロッパー目線で考える視点のため、分譲マンション購入時には、この視点もおろそかにされがちということになります。
では、分譲マンションを購入するときに最も大切なことは何でしょうか?
それは市場性、すなわち、類似の分譲マンションの価格が幾らであるかが、価値判断の重要な指標になってきますね。
すこしづつ、見えてきましたか?
ここまでをまとめると分譲マンションを買う場合、
市場性:十分に考慮する
費用性:まったく考慮しない
収益性:ほとんど考慮しない
ということになります。
不動産経済研究所の発表によると2017年上半期の首都圏マンション価格は一戸あたり5884万円となっています。
一般に、無理なく返済をするための住宅ローンの年収倍率は4~5倍といわれています。
そうすると、6000万円近いマンションを購入しようとした場合、1500万円の頭金を用意したとしても年収900万円を稼ぐ必要があります。
果たして、その条件を満たす人がどれほど多くいるでしょうか?
仮にあなたがその条件を満たして、6000万円のマンションを購入したとします。
そしてあなたが数年後に購入時の価格もしくはそれ以上の価格で売却しようとしたといます。
おそらく、買い手はつかないでしょう。
不動産分譲戸数はすでに、毎年前年割れの状態となっていますが、これはマンション価格が高騰しすぎたため、購入できる人がほとんどいなくなってきているからと考えられます。
高値水準の不動産が売れない時代がやってきた
ここまで、リートの動きとマンションの買い手の減少について説明してきましたが、これらからは言えることは、リートが扱う賃貸用のオフィスもレジデンスも、個人が居住用に購入する分譲マンションもすでに高値圏にあり、買い手の数が減少傾向に向かうということです。
経済学を勉強したことがある人ならすぐに分かると思いますが、需要が減少すると価格が下がります。
不動産の場合、マンションデベロッパーが常に新規で供給をし続けるため、供給は一定程度あります。
その結果、需要は減少し、供給が一定であることから、価格は下がります。
ここから、最悪のシナリオとしては、不動産価格が下がり始めたことをきっかけとして、現在不動産を所有している人が、値段が大きく下がる前に不動産を売却したいと思い、不動産の売り募集(供給)をすることで、価格が急激に下がり、恐怖心が増幅し、売りが売りを呼び、バブルが崩壊するケースが想定されます。
過去の景気循環を見ていると、2020年の東京オリンピックの終了後、もしくはその前年には景気が悪化するというマーケットレポートも見ることがあります。
現在不動産を保有している人は、それまでに売り抜けるでしょう。
まとめ
不動産の特性によって、不動産の価値の判断基準は異なっていますが、Jリートでも自己居住用の分譲マンションにしても、すでに需要の減退期に突入しつつあります。
需要の減少が価格の下落を招きます。
高い場所から物を落とせば、その落下スピードが加速度的に増加するのと同じように、不動産価格も、高水準になればなるほど、下落するときのスピードは加速することになります。
いまは、まだ不動産バブルは崩壊していませんが、不動産価格の下落前に売り抜けられるよう、この2~3年は敏感になった方がよいというのが、筆者からのアドバイスです。
今回の記事はいかがでしたか。
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